組織・人材
プロダクト組織を「試作の速さ」で評価してはいけない理由
AI によってプロトタイプ制作のコストはほぼゼロになったが、何を作るべきかを判断するコストは一切変わっていないため、プロダクト組織を出荷数や試作速度で評価する基準はもはや機能しない。
原題
“Product Management is Still All About Telling Stories” (プロダクトマネジメントは今も『ストーリーを語る仕事』である)
原文からの引用
“There's no question that the cost of making stuff has collapsed. But the cost of judgment hasn't changed at all.”
日本語訳 モノを作るコストが劇的に下がったことは間違いない。しかし、判断を下すコストはまったく変わっていない。
要点
- LinkedIn の元プロダクト責任者 Josh Elman は、入社面接で Reid Hoffman に「プロダクトマネージャーが生み出す成果物とは何か」と問われ、当時は「仕様書」と答えたが、後に本当の成果物は「ストーリー」だったと振り返る。
- AI によってプロトタイプ制作のコストはほぼゼロになった一方、「何を作るべきかを判断するコスト」は一切変わっていない、と Elman は指摘する。
- 開発の順序は「仕様書→工数見積もり→設計→実装」から「AI で素早く試作→触って感触をつかむ→設計→出荷して学ぶ」へと逆転したと Elman は説明する。
- Elman は、多くの創業者が「本当に使われているか」という問いに対して DAU/MAU 比率や登録者数、ARR といった見かけの指標で答えてしまうと指摘し、コアとなる行動(コア・アクション)とその発生頻度(サイクル)を定義する重要性を説く。
- Twitter の事例では、新規ユーザーが「Twitter とは何か」を説明できないという問題を、ツイート・フォロー・タイムラインの概念を1つずつ教える「Learn Flow」型オンボーディングに作り直すことで解決し、その年最大の定着率改善を実現した。
編集部の考察
(要点2)AI でプロトタイプのコストがほぼゼロになった今、プロダクト組織を「試作の速さ」や「出荷数」で評価する基準はもはや機能しない、というのが Elman の主張の核心だ。(要点4)が示すように、DAU/MAU 比率や登録者数、ARR といった見かけの指標は「本当に使われているか」という問いへの答えにはならず、コア・アクションとその発生頻度を定義できて初めて評価が成立する。(要点5)の Twitter の事例は、オンボーディング完了率ではなく翌日・翌週の再訪とコア・アクションの実行率で改善効果を測ったからこそ、その年最大の定着率改善という結果につながった。自分の組織のプロダクトチームが、試作のスピードや出荷本数を主要な評価指標に据えたままAI活用を進めているなら、それは判断の質を測れていない可能性がある。経営として決めるべきは、プロダクトチームの評価基準を「出荷数・試作速度」から「コア・アクションに基づく定着率」へ切り替えるかどうかを、次の評価サイクルで判断することである。
本記事は海外記事の独自キュレーション・考察であり、原文の翻訳ではありません。引用部分の著作権は原著者に帰属します。